マネーの公理 スイスの銀行投資家に学ぶ儲けのルール①
本書で紹介される公理はすべて、リスクとマネジメントに関するもの
第一の公理:リスクについて
・心配は病気ではなく健康の証である。もし心配なことがないなら、十分なリスクを取っていないということ。
・冒険は、人生を生きる価値のあるものにする。そして、冒険したいのであれば自分をリスクに晒すこと。
・リスクを晒さずに給料を軸に人生を設計すると、飢えることはないだろうが、新しい靴を買うたびに、よく考えなければならない。
・副公理I:いつも意味のある勝負に出ること
・失っても大丈な金額だけ賭けることは昔からの決まり文句だが、儲けるためにリスクを晒さなければ大金持ちにはなれない。
・分散投資はリスクを低減するが、金持ちになるという希望も同じくらい減少させる。
・一度に4つ以上の投機を行わないこと。より多くの投機を行うと、より多くの時間と勉強が必要となる。
第2の公理:強欲について
・常に早すぎるほど利食え。
・ギャンブルをしていると、時々大きな幸運がおとずれ、それが続け様に起きることがある。それはとても楽しく、一生乗っていたとと思う。疑いなく、それが一生続かないことを理解する分別を持っているが、強欲に囚われてしまうと、もう少しだけ続くと期待し、幸運に乗り続ける。最後に、転げ落ち、お金は消え失せる。常に少額を賭け、素早く降りる。強欲に支配されてはいけない。適当な利益が出たら、現金に換えて、立ち去るのだ(ITバブル)。
・売った株式の株価を決してチェックしてはいけない。嘆きの発作から個人投資家を守るため。
・副公理III:あらかじめどれだけの利益がほしいのかを決めておけ。そして、それを手に入れたら投機から手を引くんだ。
・終わったことを自分に納得させるための優れた方法は、何かしらの褒美を儲けること。自身が決めたゴールに達したら、儲けの一部を使って、新しい車など自身を幸せにする何かに使うこと、そうすれば、投機の終わりは、楽しみを伴うものになる。
株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす⑧
未来に向けた戦略ーDIV指針
・世界市場に連動させるインデックス運用を株式投資のコアにすべきであるが、そのリターンを上回る戦略があると確信している。それは頭文字をとってDIB指針と呼ぶ。
Dibidend(配当):個別銘柄の選択にあたっては、持続可能なペースでCFを生成し、それを配当として株主に還元する銘柄を選ぶ。
International(国際):世界トレンドを認識する。このままいけば世界経済の均衡が崩れ、中心は中国・インドをはじめ途上国世界へとシフトする。
Valuation(バリュエーション):成長見通しに対してバリュエーションが適正な株を買い続ける。個別銘柄であれ業界であれ、市場の大勢が「絶対に買い」とみているうちは、買わない。
もう少し掘り下げる
・配当:本書では、株式が高いリターンを生む上で、配当がいかに大切かを繰り返し説いてきた。配当が高い銘柄はたいてい、投資家が収益見通しに過剰に悲観的になっているので、結果的に株価が適正水準を下回り、リターンは平均を上回る。配当を維持する限り、株価の下落は配当利回りの上昇を意味するので、株価が下がるほど、投資家の保有株積み増しペースが加速する。やがて株価が戻れば、リターンアクセルの魔法が働く。高配当銘柄のリターンの高さは、米国以外でも確認されている。繰り返しとなるが、S&P10種はリターンが15.7%, S &P500は11.2%である。
・国際:今後半世紀にかけて、先進国世界と途上国世界の間で富の配分が劇的にシフトすると見ている。よってPFのかなりの部分を、国際的なインデックスファンドに振り向けるように奨めた。ドルベースの投資家であれば、米国に本拠を置く企業に60%, そうでない企業に40%の配分が適当。
・バリュエーション:株を買うとき、バリュエーションはいつだって重要。「ヘルスケア」「生活必需品」の2つを対象とするグローバル・セクターファンドに投資する。ヘルスケアのリターンが13.8%, 生活必需品が13.4%に達し、黄金の銘柄のうち90%はこの2セクターに集中している。
通信革命を背景に文化の均質化が進んでいる。各国の富裕者層の買い物ぶりはどこに行っても同じで、似たり寄ったりである。高級ショッピングモールの眺めは、北京でもニューデリーでもサンクトぺテルブルクでも、呆れるほどそっくりになった。
または、「低PER」はS &P500からPERの下位20%を選び、毎年更新する戦略を取ることもよい。低PERのリターンは14.1%。
推奨PF
・ワールドインデックスファンド
米国株30%, 非米国株20%
・リターン補完戦略
高配当戦略:S &P10,配当利回り上位20%などで15%
グローバル戦略;S &P100,ダウジョーンズグローバルタイタンズで10%
セクター戦略:医薬品、有名ブランドの生活必需品で10%
バリュー戦略:低PERで15%
どの戦略にしても卓越したパフォーマンスが保証されているわけではない。どれを選んでも間違いなく、市場平均を下回る時期があることに注意。それで不安を感じるようであれば、ワールドインデックスファンドの比率を上げるべき。
バリュー株戦略は、これまで成功してきたものの、一度世間に知れ渡れば、株価が調整されて効果を失うと主張する人もいる。しかし筆者はそうは思わない。ウォーレンも同様なことを語った。「割安株投資をはじめて35年、トレンドがこちらに逆らったことは一度もない。人間には簡単なことをむずかしくしようとする、ひねくれた性質があるらしい」。
株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす⑦
世界市場と国際ポートフォリオ
・新高成長国のGDPと株式リターンを検証した(1987-2003年)。
相関係数は高くないものの、GDPとリターンがマイナスの相関を示した。中国は9%の成長に対し、10%マイナスリターン。一方でベネズエラは1%のマイナス成長率であるが、リターンは4%。
→成長率を追うだけでは、長期的に利益をもたらす戦略とはならないということ。
・米国市場と非米国市場のリターン相関性は1998年まで0.5%を下回っていたが、相関性が高くなり2003年では0.75を超えている。しかし、相関性の上昇が国際的な分散を見合わせる理由にはならない。
・株式PFの40%を国外に振り分ける配分を進めたい。これはリスクリターン分析から割り出した結論で、分析にあたっては、為替変動も考慮に入れた。国際的に分散するためにはグローバル・インデックスファンドを推奨する。これを買えば、代表的な株価指数と同じ水準のリターンがわずかなコストで確保できる。
・S&P500インデックスファンドより、トータルストックマーケットファンドを選好する。第一の理由として、PFの分散性をできるだけ高めるため。時価総額から見て中小型株は米国市場の20%を占めるが、S &P500には含まれていない。第二の理由として、S &P500の銘柄採用や除外により投資家が不利益を被るため。採用や除外するかなり前から発表をする。その結果、投機筋が早めに売買し株価を押し上げ、インデックス投資家が不利益を被ることがあるからだ。米国すべての銘柄に連動するファンドであれば、これはありえない。
・時価総額を基準にしたラッセルも良い。ラッセル3000は米国株式の時価総額の97%が網羅される。ラッセル2000種は下位2000銘柄を採用し、小型株指数として人気が高い。
株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす⑥
金を見せろー配当とリターンと企業統治
・1871年から2003年にかけて、インフレ調整ベースで、株式の累積リターンの97%は配当再投資が生み出してきた。キャピタルゲインが生み出した部分は3%に過ぎない。10万円はキャピタルゲインでは2,400万円になったが、配当再投資により8億円になった。
・ハイテク株は他のどのセクターよりも配当が低く、運用成績は市場平均をかろうじて上回る程度。前述の通り、設備投資が高い企業のリターンは市場平均を下回っている。
配当再投資ー下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル
・相場が下落する局面で、配当の再投資を通じて保有株を余分に積み増せるので、これがPFの価値下落を受け止めるクッションになる。相場が上昇する局面に入れば、保有株式数が増えているので将来のリターンが加速する。
・高配当戦略に従うと、S&P10種:15.7%(S&P500:11.2%), ダウ10種:14.4%(ダウ30種:12%)の通り、市場平均に打ち勝つことができる。
・過去15年間一度も減配していないグループの中から、特に配当利回りの高い10銘柄を選んだ。15年間の中で一度は景気後退があるはずだからである。それでも減配しない株をS&P10コアとすると、これのリターンも15.7%であった。
過去は未来のプロローグかー株式の過去と未来
・市場最悪の暴落から大恐慌へとつながる時期にも、米国経済がインフレにあえいだ第二次世界大戦直後にも、株式の実質リターンは一貫して6.5-7%を維持してきた。
・インフレ率が上昇すると、債券の実質リターンは株式より遥かに大きく打撃を受ける。債券が支払いを約束するのは一定の金額のためだ。一方株式は、資産価格がインフレ率と連動して上昇する。期間を長期的にとれば、株式はインフレの影響を完全に吸収するとみてよい。
株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす⑤
・技術革新は必ずしも高いリターンを意味せず、高い収益も意味しない。技術革新が投資家を足腰立たないほど叩きのめした例を求めるならば、まずは電気通信業界(ITバブル)。
・S&P500で「設備投資対売上比率」に基づく3グループのリターンを検証した。
最低:14.8%, 最高:9.6%, S&P500:11.2%
設備投資こそ利益の源泉と信じる人に、この結果は答えるだろう。設備投資に熱心な企業が投資家にもたらすリターンは3グループの中で最も低い。
設備投資に踏み切らせるのは簡単だ。「よそはどこもやっている」といえばいいのだ。だがそうするうちに消費者の嗜好が変わり、今日の画期的プロジェクトは明日には時代遅れになっている。
・インターネットが登場したときに、これを利用することで利益率が改善するとアナリストが口を揃えていった。在庫管理などの業務でコストを圧縮できると考えたからだ。しかし実際には利益率を押し下げたケースが多い。これはインターネットのおかげで、ありとあらゆる市場で競争が激化したためだ。
生産性と収益ー負け組業界の勝ち組経営陣ー
・停滞した市場で着実にシェアを伸ばす企業は、活況に沸く市場でシェアを奪われ、防衛に追われる企業よりずっとましだ。
・ウォルマートの生産性優位のうち少なくとも半分は、革新的な経営手法を通じた店舗の効率性改善によるもので、情報技術とは関係ない。
・ウォルマートのほか、サウスウエスト航空、ニューコア(鉄鋼)の3社とも、コスト削減を目標と定め、「たしかな製品とサービスをこれ以上は下げられない価格で」顧客に提供することに専念した。
株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす④
バブルの罠 –市場の多幸症をどう止め、どう避けるか
・洗練されたアナリストまでが、「新時代」思考に捕らわれるなら、それはバブルとみてよい。
・バブルはたいてい、誰も予想しなかったほどに長く続くもの。そうなると、懐疑派は口を閉ざし、信奉者はいよいよ熱狂する。バブルが一旦膨らみ始めたら、いつ弾けるか、誰にも分からない。バブルをバブルと見極めたら、まずわきに退いて、それに係る企業や業界から手を引くこと。おそらく暴落するまでにはまだ値上がりする。だが最終的には、うまく売り抜いたと言われるはず。
・1990年代のITバブルの記憶がまだ鮮明なうちに、ナノテクブームが始まった。新たなテーマに熱狂すると、古い記憶はどこかに行ってしまう。数十年にかけて、最新技術はいよいよ頻繁に登場するようになるだろう。あらゆる分野で新製品・新会社が次々にあらわれるが、売買するには用心すること。未来の企業、未来のテクノロジーと言われるものはたいてい、誇大宣伝され、過大評価されている。
・バブル期のもうひとつの兆候は、ほとんど誰も知らな会社にとんでもない高値が付くこと。時価総額が大きく、知名度の低い銘柄は要注意。
・3桁のPERは避ける
・バブルで空売りは禁物。株価が100%、まちがいなく過大評価と言える局面は、たしかにある。だが長期的に正しいからと言って、短期的にもそうとは限らない。バブルがピークを迎えるのは、懐疑派が一人残らずタオルを投げて、空売りのポジションを精算した時だとよく言われる。
・投資家は市場の兆候を見ればバブルをバブルと見極められる。例えば、マスコミが盛んに取り上げ、利益が出ていなくても異常な高値が付く。世の中の根本が変わったから、従来の物差しでは測れないと言い始めるなど。どんな時でもバリュエーションは重要。
・IPO株の主な売り手は、その会社の経営陣。経営陣は会社が波に乗った絶頂期に売り出そうとタイミングを見計らう。絶頂期とは、投資家の熱狂がピークを迎えるとき。こうした起業家などは取引が始まると持ち株の大半を早々に放出する。一方投資家は、天に向かって伸びるはしごの一段目から参加したつもりが、実際には、真っ直ぐ地下まで落ちていくことになる。
株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす③
・投資家リターンの基本原則「株式が配当を生むとき、効果が増幅する」
・「ピーターリンチの株で勝つ」には、長期的な成長率と配当利回りを加算してPERで割る。1.5なら及第で2以上が合格と記載している。だが、黄金の銘柄は1.5以下であり、時代遅れかもしれない。黄金の銘柄から読み取れることは、長期的に平均を上回る増益率を、平均をわずかに上回るペースで継続すれば、わずかな違いが積もり積もって、大きな違いになる。
・黄金の銘柄に支払う対価はPERで20-30倍が妥当
・運用成績が際立って高い企業はたいてい、①PERが市場平均をわずかに上回る程度で、②配当利回りが市場平均並みで、ただし③長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っていること。
・ハイテク企業と電気通信企業は黄金の銘柄に一つも入っていない。
成長セクター投資に潜む罠
・セクターが市場で占めるシェアの推移と、投資家が手にするリターンの推移とは一致しない。例えば金融セクターとハイテクセクターは時価総額ベースで特に急激に成長したが、リターン水準は市場平均に届かなかった。逆にエネルギーセクターはシャアが劇的に縮小したが、リターンは市場平均を上回った。ただしこれは、長期的な話であり、リターンと時価総額は短期的に見れば、かなりの程度まで相関している。